はじめに
私はイラスト制作に関する一切の著作権譲渡を行っておりません。
イラストレーター人生において著作権を手放すということが大変なリスクとなり得るからです。
これからその理由についてご説明します。
◆著作権譲渡におけるリスク
1.使用料が入ってこず、イラストレーター側に多大な負担がかかる
著作権を譲渡してしまうと、イラストがどれだけ使われても、契約時に支払われた金額以上の報酬は発生しません。
クライアント様にとっては「一度払えばずっと使える」お得な契約に見えるかもしれませんが、
イラストレーター側にとっては、本来得られるはずの使用料が一切入ってこないという、大きな負担を伴う契約です。
イラストレーターの収入は制作費だけでなく、使用されることによって得られる使用料にも支えられています。
著作権を譲渡してしまうと、その収入源が断たれてしまい、継続的な活動が難しくなる可能性もあります。
たとえば、スマートフォンを契約する際には「本体代金」と「通信料(使用料)」の両方を支払いますよね?
本体代だけで何年も使い続けることはできません。
イラストも同じで、「制作費」は本体代、「使用料」は使うための通信料のようなものです。
著作権を譲渡してしまうと、通信料(使用料)が一切発生せず、制作者側には負担だけが残ってしまいます。使い続けるなら、その分の対価を支払うのが本来のかたちです。

2.競合とのバッティングにより受けられない仕事が発生する
著作権を譲渡すると、そのイラストはクライアントが自由に利用できる状態になります。
その結果、同じイラストや同じタッチの作品が競合する他社の製品に使われた場合、制作者は別の依頼を引き受けられなくなる可能性があります。
たとえば、A社のクッキー缶に私が描いた猫のイラストを譲渡したとします(著作権譲渡済)。その後、A社の競合であるB社から「動物イラストのクッキー缶」を依頼された場合、譲渡済のイラストはA社がいつでも使用できるため、発売時期が重なると混同やブランド毀損を招くおそれがあります。そのため、本来であれば発売時期が重ならなければ受けられた仕事でも、受注をお断りせざるを得ないケースが生じます。
さらに問題なのは、クライアント側の事業展開が契約時の想定を超えて広がる場合です。たとえば「お菓子のパッケージ用」に契約したイラストを譲渡しても、後からその企業が文房具や書籍など別ジャンルへ事業を拡大し、同じイラストを流用する可能性があります。
著作権を譲渡していると、こうした用途拡大についてイラストレーターに事前通知や承認を求める権利がなくなります。
結果として、気づかないうちに複数ジャンルで類似の販促物が出回り、他の依頼とのバッティングやブランド混同が増える恐れがあります。最悪の場合、思わぬ損害が発生し、責任問題や損害賠償のリスクに発展することも考えられます。
同じ作家の似たタッチの絵柄が複数社の商品に使われると、消費者が商品を混同しやすくなり、結果的にクリエイター自身の評価やブランドにも悪影響を及ぼします。このような理由から、著作権を保持することは制作者が幅広く仕事を受け続けるための重要な防衛手段です。

3.イラストレーターのイメージを損なう可能性がある
著作権を譲渡すると、クライアント側でイラストを改変される可能性が生じます。
細かな配置や配色、全体のバランスは、制作者が意図をもって慎重に調整している重要な要素です。
それらを安易に変更すると、元のバランスが崩れてしまい、見た目に違和感のある作品になってしまうことがあります。そうした改変作品が世に出回ると、イラストレーターとしてのイメージや評価が損なわれる恐れがあります。
さらに、意図せずアダルト表現やギャンブル関連など、制作者が望まない分野へ流用されるリスクもあります。これらは創作活動やブランド保護の観点からも重大な問題であるため、著作権は保持し、使用範囲を明確に定めたうえでの提供を基本としております。

◆クライアントさまの使用権について
著作権は譲渡いたしませんが、契約内容に基づき、使用許諾(ライセンス)を付与いたします。
これにより、商用利用・印刷物・SNS掲載など、安心してご活用いただけます。
使用範囲は事前にご相談のうえ、契約書またはメール等で明記いたします。
おわりに:安心してご依頼いただくために
著作権の譲渡をお断りするのは、作品の価値と制作者の責任を守るためです。ここでいう「制作者の責任」は、主に次の点を指します。
- 作品の表現を守ること
配色や構図、細部のバランスなど、意図した表現が勝手に改変されて世に出ないようにします。 - 法的トラブルを未然に防ぐこと
第三者の権利侵害や不適切な用途があった場合に、対応や説明がしやすい状態を保ちます。 - 仕事の継続性を守ること
同じ絵柄が競合商品に使われてしまうことで、新しい受注に支障が出ないようにします。 - ブランドと評価を守ること
作家名や作風が別用途で誤認されないよう管理し、長期的な信頼を維持します。
クライアントさまにはご不便をおかけすることもあるかもしれませんが、より良い作品づくりと双方の安心のためにご理解いただけますと幸いです。事前説明と誠実な対応を心がけておりますので、ご不明な点はいつでもお気軽にお問い合わせくださいませ。

